群馬幹線物語
〜遥かなる鉄塔を求めて〜
群馬線誕生
群馬幹線(建設当時は群馬線)は東京電燈(現、東京電力)により計画されて、国産部材(石川島造船所製)を使用し
金井水力発電所の運転開始(1922年・大正11年12月)と共に115KVで川崎変電所まで送電を開始した送電線です。
日本発送電が発足
金井発電所が運転を開始した当時は、全国に数多くの電力会社が乱立し、供給合戦を展開しており、正に電力戦国時代でした。
昭和に入ると更に市場拡張競争が激化し、電力会社は新たな電源開発や市場開拓に莫大な資金を注ぎ込みました。
そんな中、電力各社は己の身をすり減らす競争に倦み、自ら協調(会社統合など競争の低下を図る)を試みます。
しかし時を同じくして、世界的な大恐慌が起こり、次第に経営危機感が高まって行きます。
また、当時は電気料金が大変高価であったことが災いし、政治利用(電力値下げ運動)されたり”都市での設備投資の
穴埋めを農漁村部の電気料金に上乗せしている”などのデマが蔓延し次第に国民との壁も広がっていきました。
元々経済をも左右しかねない巨大な独占市場(影響力を持つ電力会社)を煙たく思っていた政府も
電力経済界の掌握に向けて電力事業の国管理化をすべく、集中砲火を浴びせてきました。
そして戦争が色濃くなる昭和14年7月”豊富で破格な電力を供給”をスローガンに国家管理法(略します)を制定し
すべての電力会社の設備(発電所、送電線等)を強制出資させ電力会社を解体した、電力国営化に成功します。
電力国営化により誕生したのが日本発送電という国営企業で、戦後GHQの命令により解体されるまで存在していました。
GHQ側は、敗戦国に大会社があると復興と共に脅威になる考え、戦前の民間電力会社のようにすべく解体したようです。
(日本発送電が解体し昭和26年5月に現在の電力会社体制になります)
戦時中
第二次世界大戦中は送電線の建設や補修を含め、すべて日本発送電により行われましたが、鋼材や電線等は
軍部の管理下にあり、すべて指示を受け支給され建設を行っていました。
日発も軍部の命令により最優先で軍事施設の供給工事を行っていましたが、戦果により支給も滞りはじめ、ついには
”戦艦すら無規格鋼材を使用しているのに、鉄塔如きにSS(55、41)材なんて論外・・いらない鉄塔を使え”とお達しを発します。
・・が・・ただでさえ電線など部材の軍需供出をしているのに・・不要な鉄塔など、どこにもありませんでした・・
群馬線の建替
1940年(昭和15年)には京浜地区の負荷増加に対応するため東京都内の片山開閉所(現、武蔵野変電所付近)から
最終負荷側の川崎変電所までの区間の群馬線を撤去し、新たに2回線鉄塔を新設する計画が浮上しました。
新設からわずか十数年で、建替えにより撤去された群馬線の鉄塔部材や電線は当然、軍需供出させられました。
しかし日発側は、撤去した鉄塔部材は”軍部の命令により最優先”の供給に対応するために、すべてを供出せずに
一部の部材を確保しており・・その流用鋼材や木柱などを合わせて全国的に”軍部の命令・・”に従い建設を行いました。
流用し建設した鉄塔
最近戦前、戦時中の現在の電力会社体制移行前の日本発送電時代の送電線を調べていると
”軍部の命令・・に従い建設を行った”鉄塔の幾つかの線路が中国、山陰地方だったことが判明しました。
ふと浮かびました・・まだ流用し建設した鉄塔が残っていないか??しかし戦後60年もたって・・
・・でも大正時代の鉄塔が幾つも現存していることだし・・

大正時代の鉄塔が今も現存して活躍している・・(写真 東京電力 群馬幹線371号鉄塔 埼玉県)
中国電力に現存していた群馬線鉄塔
調べを進めると・・流用し建設した旧群馬線の鉄塔は、今も中国電力で頑張っていました!
中国電力の110KV鉄塔として今も現役!
架空地線の2条の腕金はなく、地線は1条設計です。
鉄塔の組み方を上の写真(群馬幹線371号)と比べて見て下さい・・
鉄塔敷から見上げると・・
ジャンパー支持のがいしが大きく見えます。
こちらの鉄塔は頂上部が尖っていて、前の鉄塔よりひとパネル大きいです。
もっと改造されて流用鉄塔とはわからない・・と思っていました。
基礎部など各所が補強されています。
流用鉄塔が現在も残っているは
補強を施し十分な安全性が確認され・・長年に亘って保守管理が行われてきた成果・・なのでしょうね。
手入れをすれば十分使える・・古い鉄塔だからと、簡単には建替えない・・
このような、地味な企業努力こそ、もっと目を向けるべきではないでしょうか・・
・・何時までも現役でいて欲しいものです・・
現存していた流用鉄塔の建設は昭和18年12月になっていました。
遠方よりこの鉄塔を見ると、組み方が群馬幹線と同じ!!
あっあれだ!と思いました・・まさか残っているとは!
・・見れてよかったです・・
謝辞
今回の現存していた群馬線鉄塔の調査にあたり、中国電力株式会社様の多大なる協力が得られました。
失礼とは思いますが、この場を借りてお礼申しあげます。
貴重なお時間をさいてくださいました中国電力本社、支社、及び各電力所やOBの皆様、感謝致します。
誠にありがとうございました。
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